「相場師」と化したGPIF、年金が仕手戦で吹っ飛ぶ最悪シナリオ
まず言っておきたいが、私はすでに年金受給者である。だから、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が5兆円もの運用損失を出したと聞いて、いい加減にしてほしいと思った。
大方のメディアもこの問題に関しては批判的で、「国民のおカネをなんだと思っているのか」「ポートフォリオを見直すべきではないのか」式の報道が多く見られた。
このような声を受けて、野党・民進党は「年金損失『5兆円』追及チーム」をつくり、厚生労働省やGPIFの担当者を追及した。
しかし、損失を出したことだけが、それほど大きな問題なのだろうか? おカネを運用(投資)すれば、場合によっては損失が出るのは当たり前である。その反対に、運用益を出し続けることもある。
とすれば、GPIFは投資が下手なだけだ。つまり、本当の問題は、GPIFがなぜ、こんな下手な運用しかできないのかということだ。
今回問題視されたのは、8月26日に、GPIFが年金運用実績を公表したからである。それによると、2016年4〜6月期の運用実績は5兆2342億円の赤字で、赤字は2期連続である。
その原因をGPIFは、「英国のEU離脱決定などで加速した円高・株安が響いたから」と説明した。実際、今年6月の日経平均株価は1万6000円ほどで、
1年前の2015年6月に2万円あったところから、ざっと4000円も下落している。これでは、運用損失が出るのは当然だ。
しかし、運用損失を出した本当の原因はそうではない。GPIFが、資産を株式に偏った運用をしてきたことにある。
2014年10月、GPIFは運用比率を見直し、資産構成に占める株式の比率を24%から50%(このうち日本株は12%から25%)へ、なんと2倍に増やした。これまでになかったポートフォリオの大幅な変更である。
このポートフォリオの変更は、当初はうまくいった。なにしろGPIFは、約140兆円の資金を持つ巨大投資家だから、株を買い進めれば株価は間違いなく上がる。
それに、アベノミクスの掛け声とともに、日銀も異次元緩和の一環として上場投資信託(ETF)買いを増やしたのだから、日本の株価は上がって当然だ。
実際、GPIFなどの公的資金と日銀は「5頭のクジラ」と呼ばれることになった。こうして日本の株式市場は、クジラが「仕手戦」をやっているようなことになってしまった。
GPIFは投資家というより「相場師」になったのだ。この仕手戦により、GPIFの2013年度以降3年間の累積収益は、いっとき約37.8兆円に上ったという。
>>2以降に続く
http://ironna.jp/article/3923